事業再構築ビジネスプラン
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トレーラーハウスで絶景リゾート ~仕掛人の新たな挑戦は室内キャンプ~

本別町
株式会社 KOYA.lab(コヤラボ)

本別町,本別町商工会
株式会社 KOYA.lab(コヤラボ)

■企業情報

土木工事会社役員である代表者が、町内企業で勤務する建築士と共同で、観光客などにトレーラーハウスを貸出すレンタル会社「株式会社KOYA.Lab」を平成29年1月に設立した。 主な業務は近年注目を浴びる「グランピング」需要に向け自社開発のタイニーハウス(トレーラーハウス)の貸出し・販売をしており、新しい宿泊形態の創造を目指している。

「KOYA.Lab」が独自のノウハウにより設計・制作したタイニーハウスは、施設内にトイレ・シャワー・キッチンが完備されているため、「手ぶらで現地に来るだけ」と近年話題となっているグランピングアウトドアスタイルが場所を選ばず体験できるため、新しい宿泊形態としてメディアで多く取り上げられている。 普段は、十勝平野や雌阿寒岳を一望でき、夜景や雲海なども楽しめる町有地の高台に配置しており、その他にも十勝の魅力を存分に満喫できる厳選した20カ所から宿泊地を選択し、サービスを受けることもできる。
 
また、単に設備をレンタルするのみではなく、関連する観光・体験サービスや飲食の提供についても、商工会青年部当時の人脈を活かし、食事のケータリングやクリーニング、アクティビティなど地域の事業者と連携して運営している。

■現在の事業状況と新型コロナウイルスにより受けた影響

コロナ禍において、緊急事態宣言やまん延防止措置期間中は、キャンセルが相次いだが、宣言明けには三密を避けられる観光形態として予約が殺到する極端な状況にあった。

しかし、タイニーハウスが1台しかないため複数の予約を受けることができず利益の確保のためには新たなビジネスモデルの構築が必要となっていた。 また、タイニーハウスのレンタルは物品賃貸業に該当するため宿泊予約サイトへの掲載、旅行代理店によるツアー商品の中で宿泊サービスとして登録することができない状況にあり、広告宣伝活動にも制限があった。

今後、アフターコロナにおけるテレワークの増加や働き方の変化によるワーケーション需要に対応するためワーキングスペースを備えた宿泊施設の増設と近年注目を集めているインドアキャンプが体験できる屋内キャンプ施設の整備を計画した。

■新たなビジネスモデルの内容

事業再構築補助金採択までの流れ

コロナ禍で観光需要が減少する中、三密を回避できるアウトドアが注目され、とりわけ「KOYA.Lab」が提供するプライベート空間でのキャンプを楽しめるタイニーハウスは注目を集めたが、提供数に限界があり、売上の確保に課題があった。  

そこで、タイニーハウスを普段設置していた町有地から300mの距離にある足寄町の閉館された民宿「陵雲荘」を取得、陵雲荘を改装し景観を活かした中山間過疎地域におけるコワーキングスペース運営事業を主体とした計画を作成し、事業再構築補助金の申請を行った。

商工会からの支援があったからこそ

1回目の申請は商工会で実施する専門家派遣事業を活用しながら自身で事業計画書を作成、資金調達先であった金融機関を窓口として申請したが、残念ながら不採択となった。

2回目の申請で採択になった要因をたずねると「商工会からの支援のおかげ。」と岡崎社長は答えた。

次なる申請の準備を始めるにあたり、「源すし」での事業再構築補助金の支援実績がある本別町商工会 久保経営指導員に相談、支援を依頼した。  2回目の申請は、アウトドアやキャンプを目玉にした観光宿泊施設として陵雲荘をリニューアルし、手軽にアウトドアキャンプが楽しめる屋内キャンプ施設とキャンプを楽しみながら働けるワーキングスペースを提供するための施設改修に計画変更、岡崎社長が計画を作成し、 久保指導員が添削するやり取りを何度も行った。

商工会の支援を受けて「小規模事業者が地元商工会にしっかり支援してもらって進める計画と認識してもらえたことも採択された要因の一つだと思っている。」これだけは皆さんに知ってほしいと岡崎社長は強く語った。

岡崎社長の計画について「事業自体はしっかりとしたビジョンを持っていた。審査員にわかりやすく伝えることをメインに添削したことが採択に繋がったのでは。」と久保指導員は採択要因を分析した。

事業再構築補助金の採択を受けて

「こういう事業はきれいにいっているように見えるが日々問題が発生し、実際すごくうまくいっているわけではないんですよ。」岡崎社長の言葉のとおり、事業再構築補助金採択後、取得した施設の確認を行ったところ老朽化が酷く計画以上に改修経費が必要となったため急遽、計画変更承認申請を行い、建物を利用する計画から建物を解体・撤去し、「KOYA.Lab陵雲荘」を建設する計画に変更した。  新たに建設した宿泊施設は「雲海に泊まる」をコンセプトに部屋から雲海を眺められるグランピングルームやダブルルームなど計6室とサウナやファイヤーピット、キャンプブースなど様々な施設も整備した。

「まずはなんでも始めることが大事。特別キャンプが好きなわけではなく、本別町が好きなだけ。まちが残らないと次の世代になにも残せない。まちのポテンシャルを活かしたコンテンツを増やしたかった。」と岡崎社長は「株式会社KOYA.Lab」を設立したきっかけを語った。

「青年部のネットワークを活用したこういった取り組みが全道で広がっていくことを望んでいる。
トレーラーハウスや陵雲荘の運営について聞きたい方は遠慮なく聞きに来てほしい。」と岡崎社長は続けた。
この想いが事業再構築補助金を申請した一番の理由だったのかもしれない。

取得した旧民宿「陵雲荘」
「KOYA.lab 陵雲荘」
サウナ

■補助事業活用と事業実施のポイント

これまで本別町商工会青年部長を務めるなど、地域の若者らと共に経済が縮小していく過疎地域の振興に努め「ほんべつ豆まかナイト」など町外からの交流人口を増加させるためのイベントを立ち上げてきたが、イベントだけでは地域への振興効果も一過性になってしまっていることから継続的に地域滞在を図れるサービスを模索していた。 そこで、コロナ禍における顧客のニーズに対応したキャンプやグランピングサービスを一年を通して室内で提供することにより、受入数や季節的制限が解消され、課題であった機会損失が回避される。

さらに、当社に宿泊する顧客が増加することにより周辺観光施設の利用拡大や地元企業の需要増加にも
つながっていく。

■専門家による支援 〜専門家派遣等事業の活用〜

新たなビジネスモデル実施に伴い、道商工連の「専門家派遣等事業」を活用し、中小企業診断士により
コロナ禍における宿泊事業の転換と再構築について指導、助言を受けた。

■構築後に期待できる効果

屋内でテント泊ができる宿泊サービスは、恐らく北海道初となるサービスであり、コロナ禍において変動する需要に左右されない三密を避けた宿泊事業として安定した売上を確保することが可能となる。  

特に課題だった冬期誘客について宿泊を伴うような滞在型の取り組みが行われておらず、これが地域で観光業・観光人材が育たない要因となっていたが、本事業を実施することにより観光業を季節限定のビジネスにしない事業の再構築が可能となった。

また、地域の人が連携し、地域で稼ぐビジネスモデルを構築することで人口減少や過疎化に悩む地域の活性化につなげることが可能となる。

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