事業再構築ビジネスプラン
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すし店からホテル宿泊業へ展開 ~二代目大将の決意~ 

本別町
有限会社 源すし

本別町,本別町商工会
有限会社 源すし

■企業情報

昭和62年先代が創業、以来32年間本別町の中心部に店舗を構え、現在まで営業している。
現代表は、2代目として平成24年10月に代表取締役に就任、すし店にとらわれない豊富なメニューと本格的な日本料理をリーズナブルに楽しめ、気さくな接客から気兼ねなく来店できる店として幅広い客層から支持されており、売上を順調に伸ばしてきた。  

店舗は1階にカウンター席と個室、2階に宴会部屋があり、売上の構成は行政・学校関係などの大型宴会を主軸に、個人客・仕出し・ランチも手掛けている。  

また、地元から宴会や映画上映など娯楽施設として長年愛されていた大型宴会施設「津村会館」の廃業に伴い、施設の存続を希望する利用客から承継の依頼を受けて、当店に施設が近接することもあり平成23年に取得、最大200人が収容できる大宴会場のため自社のみで、料理提供など対応が困難なことから町内飲食店と連携して運営していた。

店舗外観
店舗内観1F(カウンター・小上がり)
津村会館(大型宴会場)

■現在の事業状況と新型コロナウイルスにより受けた影響

新型コロナウイルスの感染拡大後、夜の飲食店で経路不明の感染者が増加し、休業や時間短縮営業が 要請されたことにより大幅に売上が減少、当時、当町における新型コロナウイルス感染者はごく一部であったが、地方では感染者が現れたと情報が流れると町内の夜の飲食店は来店者数が0となるほど感染 防止に対する意識が高く、町内で感染者が出ることは飲食事業者にとって死活問題となっていた。  

令和2年4月には町内大型宿泊施設「本別温泉グランドホテル」の撤退により、これまで本別町に宿泊していた観光客・ビジネス客が近隣市町村へ流出することになり、宿泊業と関わりの深い飲食業者としては本別町に訪れる顧客が他市町村に宿泊することで消費が流出する危機感を抱いていた。

また、令和3年に町内唯一の弁当・仕出し店が廃業することになり、農業繁忙期には200個を超える 農業関係者からの弁当受注や冠婚葬祭時における仕出しなど、関連消費が町外に流出する恐れがある ため事業承継を決意、新たに会社を設立し、従業員の雇用も維持した。
さらに翌年、町内葬儀社の廃業も決定し、こちらも消費の町外流出を防ぐために事業承継を行った。

■新たなビジネスモデルの内容事業再構築補助金活用のきっかけ

施設の老朽化や消防法による設備の整備が必要になったことに追い打ちをかけ、新型コロナウイルス感染症の影響による大型宴会の自粛により、休館状態が続いていた「津村会館」の活用方法について検討していたところ事業再構築補助金の情報を得て、施設の活用方法を検討、宴会需要を主軸とした飲食業からビジネス・観光宿泊者のニーズに応えた宿泊業への進出を決意した。  

生活スタイルの変更により今後も大規模宴会の需要が減少することから、域外消費の獲得と町内大型宿泊施設の撤退による機会損失をビジネスチャンスに変えるため津村会館を解体・撤去し、新規事業としてビジネスホテルを建設するための事業計画策定を開始した。

■経営指導員による伴走支援の手法

計画策定から実行段階まで継続して支援してきたのが本別町商工会の久保経営指導員、源すしの営業時間終了後に池田社長と再構築事業計画やスケジュールについて度々相談に乗っていた。

「池田さんのような泳ぎ続けなければ死んでしまうマグロのような人に伴走支援をするのはキツかったが、地方でこんな計画に携われることは中々ないので楽しみながら支援できた。」と久保指導員は語る。  

池田さんも「久保指導員が全ての局面で的確な支援をしてくれて、時には国や関係機関に対し、補助対象経費などの交渉もしてくれた。久保指導員がいなかったら計画が具現化することはなかった。」と感謝の気持ちを隠さない。  

今回、事業実施にむけた各段階で専門家支援を上手く活用、道商工連が実施する「専門家等派遣事業」を令和3年度から計6回使用し、専門家と連携したことで1回目での採択と事業実現に繋がったと考えられる。

■事業再構築補助金の採択を受けて

今回、老舗寿司店の強みを活かし、食を中心とした宿泊施設として新分野展開することで、近隣に流出していた宿泊需要を取込み、本別町の観光産業の活性化を図った。  

かねてより、遠方から来店された顧客より要望があった帰りの交通手段を気にすることなく本別町の飲食店を楽しみたいとの声に応えることが可能となり、飲食と宿泊部門による相乗効果を期待することが可能となる。池田さんは今回フォーカスされたホテルと寿司屋の融合だけではなく、食材を有効活用するための弁当・仕出し店への展開や仕出し先である葬儀社の経営などサスティナブルなコンセプトによる地域商社的な役割を果たしつつある。  

ホテル開業を直前に控えた池田さんに心配なことはないか尋ねたところ「楽しすぎてヤバい!!」という答えが返ってきた。池田さんと久保指導員、二人から共通して発された「楽しい」という言葉、そして池田さんの口から度々聞かされた「町のために、若者のために…。」今後も多くの課題が発生すると思うが二人から悲壮感は感じない。  

酒を酌み交わし、楽しみながらホテル完成後の町の姿をイメージする、このイメージを楽しみながら共有できたことがこの事業一番の成功要因と言えるかもしれない。

店舗外観
客室
源すし(店内)

■補助事業活用と事業実施のポイント

撤退した本別温泉グランドホテルは、多くの宿泊客を受け入れていたため、コロナウイルス感染拡大の影響により宿泊見込み客は減少しているものの近隣市町村に流出していた宿泊客の獲得が期待できる。  

しかし、事業採択後、改めて試算したところ当初予定していた総事業費より原材料高騰などの影響で約60%建設費が増加、補助金額は確定しているため自己負担額が増加することになったが、地元商工会経営指導員の支援により宿泊部門に加え、飲食部門の収支計画の見直しを行ったことで金融機関からの追加支援が可能となり危機的状況を乗り越えることができた。

■専門家派遣等事業の活用

新たなビジネスモデル実施に伴い、道商工連の「専門家派遣等事業」を活用し、下記の内容の支援を受けた。  

● 中小企業診断士による事業再構築補助金の申請準備状況の確認と事業開始に向けた専門家の紹介

● ホテル業界経験者による開業までの事業計画支援及びスタッフ教育の重要性とマニュアル作成指導

● 従業員教育専門家による接客・接遇の従業員指導及び接客マニュアル作成指導

● 中小企業診断士による開業に向けた最終確認と効果的なPR手法の指導

■構築後に期待できる効果

本別町の強みである自動車移動での交通アクセスの良さと、老舗寿司店だからこそ提供できる寿司や日本料理といった飲食店の強みを活かし、他店と差別化を図った宿泊サービスを提供することで新型コロナウイルス感染拡大により、壊滅的な打撃を受けた宴会需要を宿泊部門の売上により補完することが可能となる。  

実際、事業計画では客室稼働率の目標値を60%に設定していたが、開業後は観光客だけではなく道央・道東を商圏とするビジネス客の拠点として使われることが多く、稼働率が80%前後で推移している。 

今後、当社が運営する「すし店」「ホテル」「弁当・仕出し」「葬儀社」が連携し、人材・資材・ノウハウ等を共有することにより様々な資源の流用が図られ、各部門における相乗効果を得ることができる。

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