事業再構築ビジネスプラン
事業取組事例紹介事業取組事例紹介

自社の強みと地域の特性を活かした事業展開~飲食店が行う中国語教室の開設~

富良野市山部
ちいさなログカフェふらわ

富良野市山部,山部商工会
ちいさなログカフェふらわ

■企業情報

平成21年富良野市山部にて開業、翌年に地域の活性化を目的に設立された富良野市独自のご当地グルメ「富良野オムカレー」推進協議会に加盟、看板メニューとしてオムカレーの提供を開始した。
オムカレーの他にパスタ・丼もの・ドリア、珈琲・ソフトクリームなどのカフェメニューや自家栽培ラズベリーを使用した特製ジャムを提供している。
当店のオムカレーは地元・富良野市の農家が育てた玉ねぎなど野菜をふんだんに使用しており、新鮮な野菜が多くて美味しいと評判もよく、リピーターも多い。

■現在の事業状況と新型コロナウイルスにより受けた影響

開業当初は、ご当地グルメブームにより売上が安定していたが、近年ではブームが下火になり売上が減少傾向にあった。さらに、まん延防止・緊急事態宣言の影響により外国人客や道外からのツアー客が激減したことにより、経営は厳しい状況となった。
コロナ禍において飲食業のみでの集客に限界があることから、新たな事業展開を考えるようになっていた。

■新たなビジネスモデルの内容

事業再構築補助金活用のきっかけ

きっかけは山部商工会が全会員に配布した事業再構築補助金の案内チラシだった。
山部商工会の結城経営指導員は事業者にとって有益な情報を常に発信し、それに対する支援も積極的に行っていた。
「ちいさなログカフェ ふらわ」の店主 鏡味万平さんも商工会から配布された事業再構築補助金の案内をみて、結城指導員のもとへすぐに相談に向かった。
農業が盛んな北海道では外国人技能実習生が果たす役割が大きく、特に中国人実習生は増加傾向にあった。「ふらわ」が所在する富良野市山部でも多くの中国人実習生が就労しており、以前、鏡味さんの妻で台湾出身の謝宜棻さんが農業法人から依頼を受け、農業用語の日本語教室を行った際、好評だったことから、現在厳しい状況にある飲食業と平行したもう一つの柱として宜棻さんの語学力を活かした中国語・日本語教室を新規事業として実施したいと考え、事業計画の策定の支援を結城指導員に依頼した。

不採択でも再チャレンジ

「これだけのボリューム感のある書類を作ったことはなかった。」結城指導員の言葉に「ふらわ」の鏡味さんは大きく頷いた。
「書類の作成はほとんど商工会に支援してもらったことで助かった。」と鏡味さんは語る。
申請書の作成は全面的に商工会が支援することになったが、補助金額が大きい分、高度な計画が求められるため、以前、結城指導員がものづくり補助金の申請でつながりのあった「旭川産業創造プラザ」の支援を受けることにした。
事業再構築補助金の申請書を作成するために結城指導員と鏡味さんは何度もデータのやり取りを行い、ある程度の手応えを感じて1回目の申請に臨んだが不採択となってしまった。
2回目の申請に向けて再度、事業概要を読み込んだところ、先端的なデジタル技術の導入やSDGsの取り組みが重要と考え、WEB教室や質の高い教育を提供するための指導手法を追加するなど、議論を重ねて事業計画をブラッシュアップし、2回目の申請に臨んだところ念願の採択となった。

さらなる展開に向けて

今回、「ふらわ」では事業再構築補助金を活用して語学教室を実施するレッスンスペースを確保するため、既存店舗を増築し、中国語・日本語教室用のスペースを新たに設け、語学教室を開始した。
「事業再構築補助金は原則1回しか申請できないけど、2回目の申請が可能になれば挑戦したい。
持続化補助金も2回活用しているが継続して申請を考えている。結城指導員から有益な情報を得て新たなチャレンジを続けていきたい。」と鏡味さんは強く語った。

■補助事業活用と事業実施のポイント

現在、富良野地区では語学教室が併設されている飲食店が1軒あるが英会話教室のため、「ふらわ」が新規事業として実施する中国人・日本人両者の需要に応える語学教室は地域初となる。
語学教室の受講者が新たに飲食店の顧客となることで、両事業の相乗効果が期待できるとともに、競合他社に対しても複合的な営業形態として優位性を発揮できる。
また、外国人技能実習生に対する日本語教室を開設することで、売上の確保だけではなく、実習生の雇用安定や精神面でのケアなど地域貢献につなげることが可能となる。

支援機関との連携

道北地域の企業のものづくり、新産業創出、人材育成などを支援するため道や旭川市などによって設立された一般社団法人「旭川産業創業プラザ」と連携することにより、申請書の精度を高めることが可能となった。

■構築後に期待できる効果

周辺農家でも中国人などの外国人労働者は年々増加しており、日本語レッスンの需要がある。
さらに、農業だけではなく福祉・建設業界でも外国人実習生が増加しており、この需要は増加の一途を辿っている。
アフターコロナを念頭に置いた場合、中国人観光客も必然的に増加するため語学教室の市場ニーズは高い。特に商圏となる富良野地区には、競合他社は存在せず、外国人客相手の飲食店・宿泊施設が多数あり、接客に関する中国語レッスンの需要が見込まれる。