事業再構築ビジネスプラン
事業取組事例紹介事業取組事例紹介

宿泊業とアウトドアのノウハウを生かした新分野への展開~グランピングとワーケーションの融合「グランピングトマム」~

占冠村
株式会社ファン

占冠村
株式会社ファン

■企業情報

昭和58年占冠村トマム地区にて個人事業主として宿泊業を開業。平成4年に法人化、平成12年には宿泊業に加えアウトドア事業を展開している。平成20年には中富良野町に事業拡大を図り、宿泊業に加え飲食店も開店し、富良野エリアでもアウトドア事業を開始した。
アウトドア事業は、トマムエリアで夏季にラフティングを中心に一般客や修学旅行生の受け入れを実施、冬季にワカサギ釣り、スノーモービル、スキースクールを実施している。 中富良野地区は、セグウェイツアー、キャニオニング、クワガタ採取など自然を大いに体験できるメニューで年間を通して幅広く事業展開、アウトドアについては、経験値の高い熟練したインストラクターが対応にあたり顧客からは高評価を得ている。

■現在の事業状況と新型コロナウイルスにより受けた影響

インバウンド客の影響で数年前からトマム地区の客層が変わってきており、当社の宿泊客はリゾートホテルの添乗員やバス会社、工事関係者の割合が大半を占め客単価が下がっていた。
その後、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、不要不急の外出自粛、外国人観光客の渡航規制などの影響が大きく売上が激減し、当社で展開する宿泊事業は危機的な経営状況にあった。 コロナの影響が長期化し、キャンプ需要やワーケーション市場が拡大していることから、数年前から構想にあったグランピングなど新たな宿泊形態事業の実現に向けて実行しようと検討していたところ事業再構築補助金の情報を得て申請を決意、グランピングとワーケーションを融合したグランピングトマム事業の実施を目指した。

■新たなビジネスモデルの内容

事業再構築補助金活用のきっかけ

「新型コロナウイルス感染症の支援金申請からいろいろ相談を受けるようになった。」占冠村商工会の小倉経営指導員が「株式会社ファン」取締役 北野さんとの関係について語った。
北野さんは常に有益な情報を求め情報収集しており、事業再構築補助金の情報もいち早く入手し、補助金の申請について支援してもらえないか小倉経営指導員に相談した。
「ファン」では新たな事業を実施する目的でトマム地区の自社ホテル隣地にあるバス会社が所有していた土地・建物を取得しており、今回、事業再構築補助金の公募がグランピング事業の早期実現に向けた後押しとなった。

小さな商工会の大きな支援

占冠村商工会は全道でも規模が小さく、商工会員数も65事業者となっている。小倉指導員も小規模事業者持続化補助金など比較的事業規模が小さな補助金の申請を支援したことがあるが、この規模の補助金は初めてだった。
「支援で苦労した内容は市場・競合の調査と分析が一番大変だった。」と小倉指導員は語る。
新分野展開を行う上で、競合調査は重要だが、市場がまだ小さく、情報が少ないためグランピングに関係するホームページを片っ端から調べ、それでもわからないことは北野さんに確認し、納得がいくまで市場・競合調査と分析を行った。
資金計画や経営資源の洗い出しなど、経営指導員だけでは対応しきれない専門的な知識が必要な場面では、税理士や中小企業診断士の支援も受けた。

ピンチをチャンスに

今回、事業再構築補助金の採択を受け、グランピング用「ドーム型テント」、シャワー・トイレなど専用施設を完備した「グランドシートテント」を整備、その他にもキャンプ利用者などが使用する共用施設やワーケーションスペースも造作した。
北野さんは言う。「コロナの影響でインバウンド関連需要は激減したがピンチではなくむしろチャンスと捉えている。」
結果的にグランピングを始めることで自社の強みであるアウトドアと宿泊事業の融合が可能となり、本来ターゲットとしていたファミリー層・女性客の獲得につながり、客単価を向上させるチャンスとなった。 「何もしないでいると現状は変わらない。とりあえずいつもプラス思考で考え、ピンチをチャンスに変えていきたい。」最後に北野さんは強く語った。

■補助事業活用と事業実施のポイント

既存の宿泊事業に加え、新たにグランピング施設とキャンプ場を整備することによって、当社事業の新たな柱とした。
コロナ前はリゾートホテルに宿泊する関係者の受け入れが大半を占め、客単価も下がっていたが、コロナ禍によりインバウンド需要がなくなり、当社の強みであるアウトドア事業をグランピングとセットで提供することにより付加価値向上と本来想定していたターゲット層の獲得につなげることが可能となった。
また、ワーケーション市場の拡大を踏まえ、グランピング敷地内に「ワーケーションスペース」を整備し、キャンプ事業との融合を図った。
当初予定していた総事業費より、ウッドショックなどの影響により30%程度事業費が増加、補助金額は確定しているため自己負担額が増加したが、事業計画作成の段階から金融機関と連携していたため増額分の資金調達も支障がなかった。

専門家による支援

専門家派遣等事業の活用
新たなビジネスモデル実施に伴い、道商工連の「専門家派遣等事業」を活用し、中小企業診断士により新分野展開による事業再構築計画策定について指導、助言を受けた。

■構築後に期待できる効果

新型コロナウイルス感染症の流行により、落ち込んだ宿泊・アウトドア事業の売上減少について、コロナ需要を見据え、事業者側が道具や食材などを用意し、手ぶらで豪華なキャンプが楽しめる「グランピング」施設を整備することにより売上回復につなげることが可能となる。
また、宿泊客については当社が従来ターゲットとしていた家族連れなどの客層を獲得することでピンチをチャンスに変えることが可能となった。
ワーケーションスペースの建設については、当社の所在地であるこのトマム地区には、「星野リゾート・トマム」や「クラブメット北海道トマム」があり北海道でも有数の「高原リゾートホテル」として全国的に認知されているため適した立地条件であり、市場の拡大と関係機関及び他社との連携、ホームページやSNSでの周知により利用者の増加につなげることが可能となる。 「北海道の魅力発信」「観光需要の回復」という大きな課題にも効果的な取り組みとなるとともに事業を拡大させることにより雇用の創出が図られ地域貢献にもつなげていく。